学術情報を発信するニュースレター J×J Supporters
「J×J supporters」はレタープレス株式会社が発行する「学術情報」発信に関するNewsletterです。「学術」に関する情報について「用語解説」や「セミナー参加でのお役立ち情報」、「相談解決事例」など、年数回のペースでご紹介してまいります。
[創刊号 No.1]
(2014年1月15日発行)インパクトファクターやオルトメトリクスで 学術誌や論文等の評価、影響度を測るとは? -Academic information-
現在、学術誌を客観的に評価するために、広く用いられている 指標はインパクトファクター(Impact factor)と呼ばれ、トムソン・ロイター社が提供しているWeb of Scienceという学術誌データベースにて算出されております。
このインパクトファクターはWeb of Scienceに掲載している「ある学術雑誌の1つの論文が平均で他の論文に何回、引用されたか」ということを示す数値であり、例えばA雑誌のインパクトファクターが2.10の場合は、「A雑誌の論文は学術論文から平均2.1回引用されている。」ということとなります。
このような引用数での評価指標は「論文は他の論文を引用しながら書く」ということを利用したものであり、同分野の中の学術誌と、影響度の具合を他のものと比べて比較するため、以前から広く用いられております。
また、現在ではこのインパクトファクターのような「被引用数での評価指標」とは別にオルトメトリクス(Altmetrics)と呼ばれる、学術論文そのものの影響度を測定しようとする手法も登場しております。
これはWEB上でのソーシャルメディア(SNSやブログ)等の反応(フォローやつぶやき等)から学術論文単体記事の影響度を測るという手法であり、研究に利用したデータセットなどの影響度もソーシャルメディアの反応から把握することができるというメリットがあります。
しかし、その反面ソーシャルメディア上での指標となるため、一般受けがしやすい記事に反応が集まり指標が偏るなどの問題点も抱えていると言われております。
※オルトメトリクスの詳細については[特集号]で掲載しています。
セミナー参加でのお役立ち情報 -Supporter's Activity-
特定非営利活動法人 UniBio Press 様/ 科学技術振興機構知識基盤情報部 様 主催 「シリーズ学術出版を学ぶ(1)」 ~Web of Scienceの新しい使い方 【学会ジャーナルを強化する】~に参加して
「インパクトファクター」(IF)算出元のデータベース、「Web of Science」を使っての自誌の現状把握と、その効果的な運用方法について、提供元であるトムソン・ロイター社様からご紹介頂きました。
【まずは自誌の現状把握が必要です】
■ Journal Rank in Categoriesという項目は、ジャーナルが同分野内ジャーナルの中でどの位置にいるかを、IFを元にQ1=上位25%、Q2=上位26%~50%、Q3=上位51%~75%、Q2=上位76%~100%に区分した指標です。この項目を確認する事で、自誌が分野内でどの位置にあるジャーナルなのかが確認する事が出来ます。【自誌引用の適切運用も大切です】
■ Journal Self Citesは、自誌引用の割合です。自然科学系ジャーナルの自誌引用は13%が一つの目安との事。高すぎるのも問題です が、低すぎるとIFの低下の原因となりますので、毎号確認し適切な数値での運用が必要です。【スター論文を途切れさせない為には...】
■ Journal Cited Half Lifeは、雑誌に掲載された論文がどれだけ長く引用され続けるかの指標です。IFの数値を上げるようなスター論文は大変重要ですが、継続して引用される論文はIF・雑誌の品質向上の大きな力となります。その他にも、Web of Scienceでは掲載論文の引用先論文とその著者・所属等も確認でき、国別・所属別の割合も確認する事が出来ますので、ジャーナルがどの地域で読まれ、引用されているのか、どのような論文が注目を集め、引用されやすいのかも把握する事が出来ます。
これらのデータは、論文採択の基準にしたり、地域を絞った投稿募集メールを送るなど、品質向上へ具体的な方策を見出す事が出来ます。電子公開等、ジャーナルのグローバル化が実現した今、論文を集める為には、ジャーナルの強化、差別化が必要なようです。
Supporter's Skill ~ 相談解決事例 ~
今回のご相談 : 日々の発行業務に追われ、本来の業務であるジャーナルの内容充実まで作業が及んでいない
今回のご相談者さまは、ジャーナルのコンテンツ充実や電子化など、アイデアはあるものの、日々の業務に追われて手がつかない模様。 その内、だんだんと投稿論文が減って来ている事に気付き、何とかしなければとご相談頂きました。
私達はまず、相談者さまと業務の中で一番ネックになっている案件と、外部に委託できる業務を確認しました。するとその業務とは【査読事務作業】である事が分かりました。
次にそれを解決すべく、電子投稿査読システムの導入をご案内致しました。委員会・理事会のご承認を頂いた上で、まずシステム導入前に電子投稿査読システム取り扱い業者様の説明会に同席し、どのシステムを選択すればよりスムーズに運用でき、なおかつ事務局作業を軽減できるのかなどを、さまざまな仮説フローを立てながら導入までをサポートさせて頂きました。
また、導入後についても更なる効率化を目指し、お打ち合わせをさせて頂きながら校正業務についてのシステムを組み込むことの検討などをしております。今まで形式化されていたメール送信を自動化することなどで効率化だけでなく、送信漏れの削減等、正確性を高めることも達成され、現在、相談者さまの作業は大幅に軽減しております。
学術と共に歩んだ120年。レタープレス株式会社の歴史物語
No.1 ~創業者 増田直吉~
明治の終わり頃の話・・・ 塩屋町通り(現在の広島県広島市紙屋町2丁目付近)に「奮闘努力」という大きな看板を掲げて営業をされている活版所があった。 その門辺を毎朝掃除していた黒い詰襟姿のかっぷくのよい大きな男がいた。この活版所が増田兄弟活版所であり、この人こそ創業者、増田直吉である。
増田直吉は最初広島県巡査を拝名、前述の塩屋町において活版所を設立し以後、舎弟と共に兄弟一致、「奮闘努力」をモットーに事業拡大を目指した。その道は決して平坦ではなく、従業員の過失による火事により社屋消失の憂き目に遭うなどの不幸もあったが「奮闘努力」の精神で乗り越えた。
その間、県・市会議員も勤め、又広島印刷業組合顧問として業界の進展に貢献する等、公私ともにめざましい活躍だった。
人を喜ばすのが好きな人柄で寒いときには従業員に甘藷の蒸したのをふるまったり、予期せぬ注文が入ったときには出来るとわかっていながら、
「のう、のう、これを三日間で文選※してみない。できみょうがい」
「のう、やってみない。これをあんた達で配分しない」と金一封を与えた。従業員は面喰らい大いに喜んだという。
昭和六年九月十七日、惜しまれつつ逝去するが、増田直吉は広島の小さな活版所からはじめ、「奮闘努力」の精神で大阪以西屈指の大活版所の基盤を築いたのであった。 。。
新米 サポーターより -編集後記-
満を持して「J×Jサポーターズ」創刊号を発刊する運びとなりました。 本紙を通じて、皆様に有益な情報をお伝えできれば…といいつつ自分も勉強できればと思います。よろしくお願いいたします。
今回はインパクトファクターとオルトメトリクスについて勉強しました。 これらの指標は、例えばグルメ評論家のコメントと、飲食店の口コミサイトの関係と似たところがあるように思いました。お店を選ぶ時に、用途に応じて様々な評価を見ますが、そのプロセスは学術情報について知りたい時も同じといえそうですね。 寒い日が続きますが、どうぞ体調にお気をつけてお過ごしください。